<剣>号作戦 もう一つのデザイナーズ・ノート その2

 ルールブックの「本当のデザイナーズ・ノート」に書いた「あるネタをぶっ込みたかった」「あるネタの丸パクリ」というのは、ル・カレ御大のスマイリー三部作、その内の「スクールボーイ閣下」からです(いや、一番好きなのはティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」と「スマイリーと仲間たち」なんですけどね)。「本当のデザイナーズ・ノート」にも書きましたが、第1部第1節はそのまんまです。もしアレを読んで「第1節だけ文章うめぇな」と思っていただいたならば、それは私の力量ではなくル・カレ御大と訳者の菊池先生のおかげです。
 大サトークラスタは年齢層が高いので、わかってくれる人が一人くらいいるかなー、と。
 ちなみに、RSBCにも出てくるんですよ、ジョージ・スマイリーが。パナマ侵攻2巻P42-43

「『シェルドン君の意見に賛成する』SIS連絡官が鼻の奥で突っかえたように響くケンブリッジ風の発音で意見をのべた。ぼんやりとした顔立ち、短躯、肥満体、といいところのない見かけ諜報関係者というより学者のように見えた。一見する限り堅苦しそうだが、ジョージという愛称で呼ばれると実に嬉しそうな顔をする可愛げの持ち主だった」

 がそれ。もっともスマイリーはよっぽど親しい人でないと「ジョージ」と呼んでも嬉しそうな顔しないと思いますが。
 で、当然ながらヒストリカル・ノートには裏設定が存在します。

●I中佐は元々OSSのスパイ。だだし、金銭的な目的ではなく「日米は敵対することなく、情報を共有し、一体とならねばならぬ」という信念で行動しているスパイ。

●しかし合衆国崩壊にともない、シェレンベルクがかっさらい自分のジョー(資産)にする(I中佐はそんなこと知らず、アメリカに協力していると思っている)。

●一方、SIS(サーカス)には「あの」ビル・ヘイドンがいる。元々ソヴィエトのスパイだったが、ソヴィエト崩壊にともないドイツのスパイに。ケース・オフィサーはこれもシェレンベルク。

●ある日、ヘイドンからオペレーション・ソードを合衆国が主張しているネタがシェレンベルクに届く。しかし実施されるのか未定のため、この情報を自分のところで留めておく。

●一方、英国は(ヒストリカル・ノートで書いたように)作戦実施を希望していた。しかし日本がうんと言わない。ヘイドンはこれもシェレンベルクに伝え、かつ作戦実施になるよう誘導したい旨も伝える。

●日本を作戦に賛成させて自分の手柄にしたいヘイドン。作戦実施が確定してから「敵の作戦を事前に入手しましたよ」と手柄にしたいシェレンベルク。利害が一致。

●そこでシェレンベルクはI中佐に、「オペレーション・ソード情報(ヘイドン情報)」を伝えるとともに、現地軍司令部が作戦実施を望んでいるよう工作を指示。

●もちろんI中佐はアメリカ側の要望だと思っているので、東京へ「作戦実施を熱望ス」の電文を送る。

●作戦実施となり、その情報はシェレンベルク、シェレンベルクからハイドリヒへ伝わる。そしてハイドリヒは自分の手柄としてヒムラーに(儀礼的に)報告して、(当たり前だが)帝国軍、陸軍、北米総軍に伝えようとする。

●ところがヒムラーがとんでもない事をいいだした。「待て、ここは軍には知らせずあえて敵に作戦を実施させる。同時に陸軍や武装親衛隊(実質北米総軍指揮下)に我々が秘密介入して部隊を動かし、そのオペレーションなんとかを枢軸軍の決定的敗北に導き、我々の勝利とするのだ。帝国軍、北米総軍といえども我が親衛隊の手のひらの上だということ、そして親衛隊は敵の軍勢を撃滅できる能力があることを天下に知らしめ、総統にご報告申し上げるのだ」

●「馬鹿じゃねぇの?」と思ったかどうかは知らないが、こんなわけのわからん命令を下されて頭を抱えたハイドリヒ。当たり前のようシェレンベルクに丸投げ。

●シェレンベルクも頭を抱えるが、とにかくお仕事なのでしょうがない。なんとか武装親衛隊内部のRSHA協力者を探し、偽命令を出して第19SS装甲連隊第1大隊をバトンルージュ郊外の休養地からレウビルへ移動させることに成功。

●他の部隊も動かそうとしていたところでタイムアップ。日本軍が上陸して戦闘開始。ヒムラーの野望は「あんまり意味なかったね」という中途半端な結果に終わる。いやそれどころか、これがバレたら帝国軍、陸軍、北米総軍から「なにやってんだお前は」と怒られて親衛隊の不祥事になること間違いなし。

●報告を受けたヒムラーは「俺は知らん」とヴェーヴェルスブルク城に引きこもる。

●不祥事の責任を被らされた格好のハイドリヒ、シェレンベルクへ「なんとかしろ!」と命令する。

●シェレンベルクは「だから何でもかんでも丸投げするなぁ!」と思ったかもしれないが、何しろエースたるヘイドンを動かしたりI中佐を動かしているので、作戦敗北後の原因調査でこれらの繋がりが出てきたらヤバイのだ。

●もちろんヘイドンだってヤバイ。しかも作戦実施へ誘導を望んだのはSIS(サーカス)でもあるから(英国は自分とこの優秀なヘイドンのおかげで作戦実施へ誘導できたと思っている)、英国もI中佐との繋がりはなんとか消したい。

●かくしてシェレンベルク立案の必死かつ即興のもみ消し工作が始まる。I中佐とは手を切ってでもヘイドンは守りたい。そこでヘイドンに「このままだと英国が誘導した事実がバレかねません。まずI中佐を艦船勤務に左遷させて隔離しましょう。日本側だって誰かに責任を押し付けたいでしょうからこの提案には乗ってくる」と主張させる。

●SIS経由で日本側へ「英国の意向」を伝える。もちろん誰に責任を取らせるかで困ってる日本側はその提案に乗る。かくてI中佐は駆逐艦長に転任。

●すかさずヘイドンはもみ消し工作第二弾を発動。サム・コリンズとトビー・エスタヘイスを連れてパナマ方面艦隊司令部へ。I中佐の私物をごっそり回収(良い子のみんなはもちろんご存知だろう、メロン少佐はサム・コリンズの暗号名。問題はトビー。トビーの暗号名がわからんのだ。とりあえず一度引退した時のミスター・ベナーティからもってきた)。

●さて、月日は流れ昭和47年(1972年)。ビル・ヘイドンの裏切りが暴露され、スマイリーがチーフに就任。シェレンベルクへの反撃が始まる。まずヘイドンの(=シェレンベルクの)弱点を探すべく<剣>号作戦当時の事を聞き取りに来日(ちょうど「スクールボーイ閣下」の時期。ミスター・スタンドファーストはもちろんスマイリーの暗号名)。

というのが裏設定。
これを読んでもし「スマイリー三部作読んでみっか」と思ったあなた。
絶対に旧訳をお勧めします!
読み難いというので読みやすく訳したら、かえって読み難くくなってしかも趣きもなくなった、と悪評ぷんぷんなのが新訳なので。

そして、あなたもトビー押しになりましょう!
(三部作読了後に「影の巡礼者」を読むとトビーが最高すぎて幸せになれます)

【2019/10/22追記】
書き忘れてた。
介入が失敗に終わって後始末をハイドリヒにぶん投げたヒムラーさん。「親衛隊が敵に打撃を与える」ってぇのは悪くないなやっぱもったいないな、と考え直してハイドリヒに「今度はUボートにコマンド乗せて大和に爆弾しかけるってどうよ」と、「標的は<大和>」に繋がったり。

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この記事へのコメント

2019年08月11日 23:34
×防露(ぼうろ?)
○暴露(ばくろ)
ulysses
2019年08月11日 23:54
すみません、直しました。